これは、どこかにある家族の物語。
決して特別ではない、ふつうの暮らしの中で起きた、小さな気づきのお話。
🌲 「あれ、今日、乾いてる…?」
昨日は雨だった。
窓の外はまだ空気が重く残っている朝。
物干し竿に掛けていたタオルを手に取った瞬間、
思わず指が止まった。
——乾いている。
生乾きの匂いも、じめっとした厚みもない。
ふわりとして、触れる手にやわらかい。
「おかしいな、こんなに湿気が残っているのに…」
理由は分からない。
でも確かに、いつもの梅雨とは違っていた。
🍃 空気が軽い。息がしやすい。
この家に引っ越して数か月。
もみの木で仕上げられた床や壁は、最初はただ「木の家って落ち着くね」くらいの軽い印象だった。
けれど、暮らしていると分かる。
空気が軽い。
朝起きた時の深呼吸がしやすい。
帰宅したときの“こもった匂い”がない。
雨の日も部屋がべたつかない。
どれも大げさな変化ではない。
でも、毎日に静かに効いてくる変化だった。
👣 子どもが靴下を脱ぐようになった
小学生の息子は、冬のアパートではいつもモコモコの靴下を履いていた。
新しい家では、いつの間にかそれを脱ぎ捨てて走り回っている。
「床が冷たくないんよ!」
さりげない一言だったけれど、
その変化が一番分かりやすかった。
もみの木の床は、
・やわらかい
・乾いたサラサラ感
・冬でもひやりとしない
という特徴がある。
子どもの方が、そういう感覚に敏感だ。
🌿 “家事のストレス”がひとつ消えた日
部屋干しが乾く。
匂いが残らない。
床が冷たくない。
空気が軽い。
どれも派手な変化ではないのに、
家事のテンポが変わり、
気持ちの余裕が少し増えた。
「なんか、今日いい朝だね」
夫がそんなふうに言う日が、以前より増えた。
もみの木は、暮らしの“背景”にいる素材。
でも背景が整うと、毎日の表情は静かに変わる。
🌱 最後にひとつだけ気づいたこと
ふとした瞬間に気づく。
洗濯物の匂いが、この家に来てから一度も気になっていないこと。
洗剤を変えたわけでも、乾燥機を買ったわけでもない。
ただ、家の空気が違っている。
見えないけれど、確かにある変化。
そんな変化が、“暮らしの快適さ”をつくっていくのだと、
ようやくわかった。
そして、思う。
この家にしてよかった。
もみの木にしてよかった。
その理由は、毎日の中に、小さく静かに積み重なっていた。


