これは、どこかにある家族の物語。
ひとつの家が、ひとつの冬を通して教えてくれた、小さな気づきのお話。
❄️ 「あれ…こんなに寒いのに、床が冷たくない」
冬の夜。
外は風の音が響き、窓ガラスが時おり震えるほどの冷え込みだった。
仕事から帰ってきた私は、
いつもの癖でストーブのスイッチへ手を伸ばした。
けれど途中で気づいた。
——寒さが刺さらない。
足裏がひんやりしない。
玄関からリビングに入った瞬間、
空気の“冷たさ”の角が取れている。
「なんでだろう…」
理由はすぐにはわからなかった。
でも、明らかに違う。
🌲 もみの木の床に、そのまま座れる
夕食後、子どもがリビングで宿題をしていた。
丸いローテーブルの横で、床にあぐらをかいている。
以前のアパートなら、
床が冷えて座れたものじゃなかった。
こたつがないと話にもならなかった。
思わず私も床に座ってみる。
——冷たくない。
むしろ、ほんのり温もりが返ってくる。
「この床、なんかいいよな。」
子どもも笑いながら言う。
ああ、これが“違い”なのか、とやっと気づく。
👣 素足で歩いても、冬の“あの嫌な感じ”がない
冬のフローリングにありがちな、
・キンッとした冷たさ
・足の裏にまとわりつく湿気
・暖房つけてもなかなかあたたまらない床
そのどれもが、この家にはなかった。
料理をしている妻も、
「台所の床も冷たくないんよ。前みたいにスリッパいらなくなった」
と嬉しそうに言う。
確かに、立ち仕事をしていても足首が冷えにくい。
もみの木は、木そのものが熱を奪いにくく、
空気も乾きすぎず湿りすぎず、
触れるすべてが“やわらかい”。
その特性が、冬の暮らしを丸ごと支えていた。
🕯 部屋の“温度”じゃなくて、体の“温度”が変わる
暖房の設定を上げていなくても、
家の中が過ごしやすいのは分かる。
でもそれ以上に驚いたのは、
体の冷え方そのものが変わったということ。
ソファに座るより床に座る方が、
逆に心地よかったりする。
その違いは目で見えるものではない。
でも、確かに「冬のストレス」が減っていた。
🏡 家族が自然とリビングに集まる夜
この冬、気がつけば
家族全員がリビングに集まる時間が増えた。
子どもは床で宿題。
妻はキッチンとリビングを軽く行き来しながら、
途中で床に座って一息つく。
私はその様子を見ながら、
同じ床に腰を下ろしてテレビを見る。
なんでもない時間なのに、
妙にあたたかい。
この家に来てから、
暖房と家具に頼らない“集まる理由”ができた気がする。
🌙 最後に残ったのは、ただ一つの実感だった
“冬がしんどくない家”というのは、
特別な設備や大げさな仕掛けがある家のことだと思っていた。
でも実際には、
床に座れるかどうか。
素足で歩けるかどうか。
帰宅した瞬間に空気が冷えていないかどうか。
そういう“体が覚える快適さ”が、
暮らしをつくる。
もみの木の床に触れているだけで、
体も、気持ちも、ゆっくりあたたまっていく。
その夜ふと、私は思った。
ああ、この家にしてよかった。
この冬を、この家で過ごせることが、嬉しい。
静かな夜、
もみの木の床にそのまま座って、
しみじみとそう思った。

